「美晴ちゃん。」
樹先輩の声にはっと我に返る。
「すいません、鍵を返させてしまって……」
「気にしないで。」
樹先輩はそう言って優しく微笑んだ。
そんな樹先輩を見て泣きそうになるのをぐっとこらえる。
「じゃあ行こっか。
美晴ちゃんは自転車だよね?」
「あ、はい。」
「じゃあ一緒に帰ろっか。」
「………え?」
確か樹先輩も自転車通学だったはずなのにどうしてだろう。
「今日は電車なんですか?」
「違うよ。」
「じゃあどうして……?」
「美晴ちゃんが心配だから。」
ほら行くよ、と言って樹先輩はまた私の腕を引いた。



