「私は...この11年間両親を無くしてから

おじさんとおばさんに育ててもらった事

とても感謝しています。


ですが、毎日のようにおばさんに暴言をはかれ

おじさんには暴力を振るわれて...

11年間ずっと我慢してした。


もう限界なんです。


だから...






ごめんなさい。



私は、婚約します。



「めぇぐぅぅうぅ!!!!

貴様ごときが何ふざけた事を言ってる!

育ててやった事に感謝してんだろ!!

だったら婚約破棄が当たり前だろお!」



と同時におじさんは私に襲いかかる。


するとまた違う男性がやってきて

おじさんの攻撃を阻止した。



「私は、柔道黒帯ですがまだやりますか?」



男性はそう呟いた。


この人も整った顔をしている...

黒縁眼鏡に、

ストレートのさらさらそうな黒髪。

知的という感じだ。


「くぅうぅぅ」


おじさんとおばさんは悔しそう顔をして

私を睨みつけている。



「それでは行こうかの」



叔父様に連れられて店を出る。

そこにはリムジンの車が止まっていた。

まさか、あれに乗るの?

まさか、ないよね。まさか...



「なに止まっておるのじゃ。
さっさの乗るぞ」



やっぱり乗るのか...さすがお金持ちだな。



「あっあの、南山さん」



私の夫という男性に話しかける。



「秋でいいよ。愛」



なんだろう。すごくドキドキする。


愛という名前は何回も呼ばれてきたはずなのに

秋さんに呼ばれたらすごく緊張する。

このドキドキはリムジンに乗っているから?


それとも、秋さんへのドキドキ?



「それと、さっき柔道黒帯とか言ってて
今運転しているのが

ボディガード兼執事の中山 優宇(ゆう)」


「どうも」



中山さんはミラー越しに塩っぽく返す。


「まぁ優宇は釣れない感じだけど

中身は良い奴だから安心して」


「はっはい!」


「愛ちゃん。

婚約している事は学校では内緒じゃよ。」


「分かりました。

井上さんじゃなくて南山さん?」


「南山さんか...総ちゃんでいいぞ」



と笑いながら言った。

秋さんも中山さんも笑ってる。


さすがに総ちゃんは馴れ馴れしいでしょ。



「でも社長に対してさすがにそれは...

私も叔父様ではいけませんでしょうか?」


「なんだ〜、

叔父様じゃったら秋達と同じじゃないか。

つまらんなの〜

愛ちゃんは気なんか

使わんでいいんじゃぞ」


「でも、私は叔父様って呼びたいんです!」


「う〜ん、そこまで言うんなら、

しょうがないのう。

でも、いつでも総ちゃんって呼んでいいんじゃぞ」



私は苦笑いで返した。


叔父様って本当に優しいひとだな。



「じゃあ、俺が代わりに総ちゃんって呼ぼうかな」


「秋は駄目じゃ」


「なんで!?」


「お前に呼ばれるのはワシのプライドが傷つくわ」


「ちぃぃ」


とスネる秋さん。

なんか、可愛い...



「今、可愛いって思っただろ」


「えっ!すみません!声出ちゃってました?」


「あ!やっぱり可愛いって思ってたんだ!」


「え!」


「愛ちゃんそんな顔しておったしの」


「嘘ー!すいません!!」


「それぐらいの事で気にしてたら

南山家ではやっていけませんよ」


「え!そんなに南山家って大変なんですか」


「南山家...というより秋様が」


「優宇!余計な事言うなよ!」


「私はただ事実を言っただけですが」



車内が笑いで満たされる。

なんか楽しいな。

一生こうして笑っていられるのかな。

暴言もはかれず、暴力も振るわれずに。