「何度言ったら分かるんだ!

そこ汚れてるだろ!」



営業中のラーメン屋から怒声が響き渡る。



「すいません!」



急いで私は雑巾を取りに行く。


店には常連のおじさんがいるだけなので、

おばさんの怒声がよく響く。



「たくっトロい子だね。誰に似たんだか。

お前の両親が死んでから

育ててやってるっていうのに、

全くの役立たずじゃないか

姉さんも、よくこんな物残してくれたわ」


「これこれ、美千代さん。

そんな事を言わさんなって。

愛(めぐ)ちゃんだって毎日学校も

あるのに手伝いをしとるじゃないか」



常連のおじさんがそう言った。

確か井上さんだっけ?



「いいんですよ。私が役立たずのは

事実ですから、置いてもらってる分

役に立たないとですし」


「井上さ〜ん、この子は当然の事を

しているだけですから。

ほら、さっさと仕事しろ」



また、おばさんが私に叱る。


さっきおばさんが言ってたとおり

私の両親は5歳の時に交通事故で死亡。


次の日からお母さんの妹さんのところ

つまり美千代さんの家に

居候させてもらっている。



「なんと、可哀想な愛ちゃんなんだ、

わしに何かできることはないかの」



とおばさんに気づかれないように

言ってくれた。



「その気持ちだけで充分嬉しいです。

おばさんはなんだかんだ言っても

高校に通わせてくれてますから

私は幸せです」



と気づかれないように返して

急いで厨房に戻った。



「愛ちゃん...



絶対助けてやるからの」