副社長の一目惚れフィアンセ

「座って。ここからの景色はきれいだけど、下を見ると怖いだろ?」

ナオはそう言いながらキッチンでコーヒーメーカーをセットしている。

「あっごめんなさい。私がやらなきゃいけないのに…」

思わずキッチンのほうへ駆け寄ったけど、ナオはそれを制止した。

「婚約者だからって気を張る必要はない。自分でやれることはやるし、忙しい時は頼むし、気にしないでくれ」

「…うん、ありがとう」

少しホッとして力が抜けた。

ナオは立場上忙しいし、私が全てやるのは義務だと思っていたのだ。

そして、気配りが下手くそな私はさんざん注意されるかもしれないと。

…お母さんに、そうされていたように。


最初に景色に目がいってしまったけど、部屋にはシアターのような大きなテレビがあり、部屋の床もティーブラウンで、そのやさしい雰囲気に合わせるように3人掛けの白いソファとテーブルが置いてある。

隅にある白い棚に並べられているのは政治経済の週刊雑誌のようだ。

シンプルなこの部屋で目を引くのは、薄いグレーカラーのラグマット。

レース柄の刺繍があしらわれたアンティーク風のそれは、多分とても高価なものなんだろう。