副社長の一目惚れフィアンセ

予想通り、到着したのはてっぺんが見えないタワーマンション。

エントランスは、オレンジがかったやさしいライトに照らされていて、ホールではピアノ音楽が控えめに鳴っている。

「水嶋様、お帰りなさいませ」

カウンターから、スーツ姿のコンシェルジュが斜め45度で丁寧に頭を下げる。

24時間体制でコンシェルジュと警備員がいるというこのマンション。

立地的にも、芸能人やテレビで観るような偉い人がたくさん住んでいてもおかしくはない。

40階建ての35階。エレベーターは低層、中層、高層階用と分かれていて、高層階用に乗ればあっという間についてしまう。

玄関はマンションとは思えないくらいの広さで、多分、うちのアパートの玄関の3倍くらいはある。

床から天井まで白いシューズラックが設置されていて、靴はそうとう入りそうだ。

ティーブラウンのやさしい木目の廊下を通り、入ったリビングで最初に目に入るのは、一面ガラス張りの窓。

レースのカーテンが透けて、窓の外の景色がよく見える。

高層階だから誰かに見られる心配もないんだろうけど、何とも落ち着かない。

高いところが得意じゃない私は恐る恐るガラスに近づき、下を見下ろした。

車の往来はまるでおもちゃのミニカーのようで、歩いている人は蟻のようだ。