不安ばかりが頭を回る。

今まで平凡な人生を送ってきて、これからも平凡に生きていくんだと思っていたのに、私、副社長夫人なんて務まるのかな…

私がそうとう青い顔をしているように見えたようで、黒岩さんが控えめに覗き込んだ。

「大丈夫ですか?」

「は、い…」

大丈夫じゃないと言いたいところだけど、今さらそんなことも言えない。

もう社長に挨拶を済ませて、左手には婚約指輪も光っている。

私はもう後戻りできない段階まできているのだ。

「婚約披露パーティーは挨拶をして回るだけですので、明里さんは副社長に寄り添っていてくださればそれだけでけっこうですよ」

「はい…」

パーティーというもの自体が初めてだから、黒岩さんが私を安心させようと言葉をかけてくれても、漠然とした不安は消えない。