副社長の一目惚れフィアンセ

負の思考を遮断するように、今度はメッセージアプリの音が鳴った。

ついさっきアドレスを交換した副社長からのメッセージだ。

『社長に婚約を報告する前に平塚にご挨拶に伺いたいんだが、都合はどう?』

なんてタイムリーなメッセージ…

というか、やっぱり夢じゃないのか。

『さっき電話で報告したので、お忙しいでしょうから挨拶はけっこうです。
私の婚約をとても喜んでくれています』

嘘をつらつらと書き連ねたけど、彼がその内容を疑うわけもない。

『そうか。正直あまり時間も取れないから助かる。よろしく伝えてほしい。
落ち着いたら挨拶に行こう』

挨拶なんて、できれば来てほしくない。

お母さんだって私の結婚にたいした興味もないだろう。

お母さんの興味は詩織に対してだけだ。


それよりも、相手は大会社の副社長。

ウチへの挨拶なんかより、社長への挨拶のほうがよほど優先事項なんじゃないのかな。

『相手の家柄にとやかく言わない』という条件なのだと副社長は言ったけど、ロースペックすぎる私のような凡人との結婚を、社長は本当に許してくれるんだろうか。

そんなところまで頭が回っていなかった。

副社長は何も言っていなかったけど、そこがまず難関になるのは間違いない。

やっぱり、さっきお母さんに報告しなくて正解だったかもしれない。