副社長の一目惚れフィアンセ

食べながらしばらく他愛の話をして、私たちは店を出た。

来るときは緊張して固くなったまま車の座席に座っていたのに、今は力を抜いて座っていられる。

会話をしているうちに完全にリラックスしてしまった自分がいる。

こんな短時間で緊張が解けてしまうなんて、単純すぎるだろうか。


お店の近くの駅まで送ってくれれば自分で帰れると言ったけど、副社長はアパートまで送ると言ってくれた。

車の中でも、彼は何気ない話題を振ってくれる。

「平塚では、お母様と二人暮らしだったのか?」

「はい。私が大学で上京するまでずっと」

「俺はずっと父親がいなかったから、会社に入れば母親にいくらでも親孝行できると思ったんだ。
だけど、会社に入った翌年に病気で亡くなってしまった」

「そうなんですか…」

「離れて暮らしていると体調の変化に気づけないこともある。大事にしてあげたほうがいい」

「…はい」

私の母親との関係はちょっと特殊だから、大事にできているのかどうかもわからず、曖昧に返事をした。