副社長の一目惚れフィアンセ

忙しい中時間を作ってきたらしい副社長はすぐに出て行き、私も放心状態のまま帰巣本能だけでフラフラとフロアに戻った。

私を見つけた香澄が駆けてくる。

「大丈夫?会社クビ?」

「…違う。プロポーズ、された」

「は!?」

香澄のあまりの大声に、一瞬周りの人の声や動きが止まるのがわかった。

だけどそれもほんの一瞬のことで、またすぐに仕事は回り出す。

「なんでそうなるのよ」

「私もわかんないよぉ」

自分で言っていて、なんて馬鹿げているんだろうと思う。

そんな話があるわけがないじゃない。

今になって涙が出そうになって来る。

これはやっぱり夢なのかな。

そうなら早く覚めてほしい。

だけどちゃんと現実的に、今日は副社長と食事に出かけるようなきれいな服装をしていない、なんて心配をしている自分もいる。

そしてさっきの副社長の言葉を少し思い出し、壁にかけられたカレンダーを見つめた。

今日は5月12日。…3日以内に婚約、って言ってなかった?

そんな無茶苦茶な話ある?


それからは全く仕事にならず、不安ばかりがグルグルと頭の中を回り続けた。