副社長の一目惚れフィアンセ

私はこの人を知っている。


既視感を覚え、心の中に何か引っかかるものを感じた。

だけどそれは、一瞬とは言え昨日顔を合わせているため、私の脳が多少なりともちゃんと彼のことを認識していたということなんだろう。


彼は一旦目を伏せてその微笑みを消し、さっきまでと同じ真剣な顔つきで私をじっと見つめる。

「単刀直入に言う。俺と結婚してほしい。婚約者になってくれないか?」


…けっこん?

こんやくしゃ?


一瞬にして頭も身体もフリーズした。

私の聞き間違いなのか、はたまた冗談を言われているのか…いや、もしかしたら夢なのかもしれない。

「…ダメか?恋人がいるか?それとももう結婚しているか?」

放心していた私は、副社長の不安げな声で我に返った。

「いえっあの…恋人も夫もいないんですけどっでもっ…」

胸の前で大袈裟に手を振るものの、さっきまで固まっていた頭の中は、動き出したと思ったら大パニックを起こしている。