副社長の一目惚れフィアンセ

一列ずつゆっくり女性を見ていった彼の目線が、とうとう私の列までたどり着いた。

視線がバッチリぶつかり、彼の瞳は私を素通りすることなく止まる。

躊躇いのない真っ直ぐな瞳から、私は目をそらすこともできない。

「…4列目の左隅から2番目の女性、立ってくれ」

顔から足先まで一気に血の気が引いていく。

…嘘でしょ?

「…はい」

声を震わせながら、静かに椅子を後ろへ引いた。

自慢じゃないけど、どこにでもいるような平凡な顔立ちだと思う。

なのに、どうしてこんなに簡単にバレてしまうんだろう。

「みんな、協力してくれてありがとう。仕事の邪魔をして悪かった。それぞれの持ち場へ戻ってくれ」

全く意味がわからないまま、ぞろぞろとドアの向こうへ出て行く社員たち。

香澄は心配そうに…いや、どちらかというと不憫そうにこっちに目を向けながら、ドアを出て行った。


足音が遠ざかり静まり返っていく部屋で、私の心臓だけがバクバクと大きな音を立ててやまない。

ゆっくりと歩いてくる副社長は、長身で足が長いせいか、すぐに私の目の前までたどり着いた。