副社長の一目惚れフィアンセ

「副社長から伝言を預かっております。少々お時間よろしいですか?」

「は、はい…」

誰もいないガラリとしたラウンジのテーブルに、向かい合って座った。

香水ではなさそうだけど、夏川さんはとてもいい匂いがする。

女性らしい、控えめな甘い匂い。

アロマだろうかと想像しながら、この匂いの魅力にナオは酔ってしまわないのかと心配になる。

本当に愚かな自分。

母親に15年も愛されることを願い続けているように、ナオにもまだ愛されたいと願っているのだ。

信じられないと、傷つけられるのはもうごめんだと思っているのに。

「副社長が明里さんのことをとても気にかけていらっしゃいます。
それで、今の状況を説明してやってほしいと」

「直斗さんが…?」

「返金やクレーム対応に関しては、特別なチームを編成して対応しています。
そのチームに割かれる社員数はかなりのものです。
副社長は主に、大手取引先への謝罪やフォローに追われています。
細々したトラブルも日々たくさん出てきまして、その対応に関する判断もあるので、なかなか帰宅できない状態です」

「…そうですか…」

話を聞いても私にはよくわからないし、やっぱり何もできないのだと思い知らされるだけだ。