そこまで話を聞いた瀬名は、はあーっと長いため息を吐いた。

「なんだよそれ。
神様ってやつが本当にいるんだとしたら、なんで明里ばっかり苦しめるんだよっ」

泣きそうに震える声で、瀬名はソファをバンっと叩く。

紗耶はただ私の肩を引き寄せてやさしく抱きしめる。

「明里…私も瀬名も、明里が大好きだよ」

「…ありがとう」

絶望から引き揚げてくれるのは、ただ、私を好きだと言ってくれる人達の存在。

…やっぱり私には、瀬名と紗耶だけだったんだ。

ナオに出会って、紗耶と瀬名のように私を認め、愛してくれるこの人と、私は幸せになれると思っていた。

そんなわけがなかった。彼も結局お母さんと同じ。

『忘れられない人』は、15年経っても彼の心にいたままだった。

彼がほしいのは、『明里』じゃなくて『詩織』だったんだ。