副社長の一目惚れフィアンセ

しばらくして、颯爽と入って来たのは長身の若い男性だ。

こちらに気付かれるのが怖くて凝視することはできないけど、ぱっと見モテそうな雰囲気ではある。

やっぱり私はあまりピンと来ないけど、ひそひそと聞こえる周りの声から『副社長』というワードが幾度か拾えて身震いがする。

秘書課の社員はきっちりとしたスーツ姿だからすぐにわかる。

そのスーツ姿の女性たちが『副社長』というのだから、この人が副社長であることに間違いはないのだ。

「忙しい中呼び出して悪かった。すぐに終わるから、少しの間こっちを見ていてほしい」

彼は真顔で教卓に手をつき、淡々とした声で言った。

…ああ。私を探してる。もうダメだ。目の前が真っ暗だ。

静まり返った部屋の中、彼の目が少しずつ右から左に動いていって、何が起こっているのかわからず困惑している女性たちをひとりずつ追っていく。