副社長の一目惚れフィアンセ

話が途切れた一瞬に、すかさず声をかける。

「お母さん、そろそろ行かないと。写真見せてくれるんでしょ?」

「ああ、そうだったわね。じゃあ、紗耶ちゃんも瀬名くんもまたね」

すれ違う瞬間に『ごめんね』と小さな声で呟いたけど、紗耶たちは複雑そうに微笑んでいた。


そこから約1時間。平塚のアパートに来るのは年に一度。

なんだかんだ理由をつけて、私はお盆しかここに来ない。

壊れたお母さんと過ごしたこの場所にはつらい記憶しかなくて、居心地が悪い。

さっきお墓参りをしてきたけど、一応ここでも仏壇で手を合わせる。

仏壇と言っても、プラスチックの台に白い布をかけただけの簡易なものだ。

そこに飾られているお姉ちゃんの遺影は、友人と撮って笑っている写真をそのまま加工してもらったというものだ。

この写真ばかりを見ていたから、お姉ちゃんの顔を思い出そうとすると、いつもこの写真の笑顔になる。