座れる場所を探して彷徨って辿り着いたのは、祭り会場から少し離れたいつもの海辺。

桜と初めて出会った場所。



「わ………きれー……」

夜空に弾ける花を見ながら、桜は感嘆の声を漏らす。

だけど俺からしたら、空の花に照らされたその横顔の方が、何よりも綺麗で、愛しい。


「桜、俺は幸せすぎてちょっと怖いよ」


思わずそう口にすれば、桜は小さく「私も」と零した。


「この花火がずっと終わらなきゃいいのに」


「はは、無茶いうなよ」




「…………このまま、時間が止まっちゃえばいいのに…………」




一際、大きな音が地面を揺らした。

きっと最後の花火だ。




───だから、聞こえない振りをした。