「李紅くん!!」

思わずガラスに張り付いた。


ガラスの向こう。

色々な管や機械に繋がれた彼は、不自然に紅潮した顔を顰めて、ぐったりと横たわっとった。

透き通るような蒼い瞳は薄く開いて、感情を失ったように一点を見詰めとる。


…………怖い。

ただそう感じた。


「あなたは……………李紅のお友達かい?」

不意に声をかけられ隣を見遣ると、そこには背の高い外国人の男の人と、綺麗な女の人が立っとった。

女の人はボロボロに泣いとった。

ああ、彼のお母さんや、とすぐに分かった。


「お友達かは………わからんです…」

「そう、でも……来てくれたんだね」

その言葉にこくりと頷くと、お父さんは再びガラスの中の息子に視線を戻した。


「昨日から熱が下がらなくて、食べても食べなくても戻してばかりで、可笑しいとは思ったんだ。そしたら少し前に……急に頭が痛いって頭を抱えて丸くなって……」


お父さんの目も、うっすらと赤かった。


「先生が髄膜炎かもしれないって言って……すぐに骨髄に注射をしたんだ。激痛で、暴れるこの子を………夫婦二人で泣きながら押さえつけたんだ」


その声は震えとる。


「その時息子は……生まれて初めて”やめて”と、”嫌だ”と言ったんだ………!!」


その悲痛な叫びに、思わず涙が頬を伝う。


「李紅は、よく笑う子なんだ。私達だって、何度それに助けられたか……」


でも、とお父さんは首を振った。


「息子は……こんなに苦しんで、痛い思いをしないと、”嫌だ”と言うことも出来ないのか……?!」


何が、そうさせたんやろか。

未来のことが分かると言った彼の、あのなんだか消え入りそうな横顔を思い出した。


彼には、自分の未来も見えてたんやろか。


…………怖くは、なかったんかな。