「暑い~~」

「暑いねぇ…………」


ジリジリと照りつける太陽。ぴたりと肌に張り付くシャツを、パタパタと仰いで紛らわす。

隣を歩く李紅は、白いキャップを目の辺りまで深く被りながら唸っている。

私たちは今、李紅が死ぬまでにやりたいことの一つである「昆虫採集」をしようと近くの自然公園に来ている。


「も~誰だよ昆虫採集したいとか言ったやつ!暑すぎて昆虫なんて出ないし」

「李紅でしょうが!」

「あーもう、俺、虫嫌いなんだけど」

「ちょ?!じゃあなんで書いたの?!」

「………なんとなく?」

「なにそれ……」

くだらない言い合いをしながら、私たちは木陰に沿って歩く。その中で注意深くカブトムシを探すけれど、なかなか見つからずに体力だけが削がれていく。

李紅が熱中症になったりしないかとハラハラしながら横目に李紅を注意深く見守っていると、私はあることに気が付いた。

「李紅、足痛めてるの?」

心無しか、李紅が左脚を引きずって歩いてるような気がした。

李紅はああ……と目を細めて笑った。

「桜に言い忘れてた。俺来週手術することになったんだ」

「手術!?」

驚いて思わず大声を出すと、李紅はあーそうじゃなくて、と私を宥めるように両手を顔の前で振った。

「小さい頃、膝に人工骨入れたって話しただろ?人工骨って成長しないから、身体が成長すると左右の脚の長さがアンバランスになっちゃったりするんだ。
それで無意識に変な歩き方してたみたいで、軽く痛めちゃった」

「脚の長さが……?」

「そ。だから1回叩いて割って、人工骨入れ直さなきゃいけなくて。──大丈夫。今までも何度かやってる手術だし、2週間くらいで退院出来るから」

「そ、そうなんだ………何度も」

最近李紅は、自分の身体や幼い頃の闘病経験について、少しずつ自分からも話してくれるようになった。

そのどれもがあまりに異様で、普通とはかけ離れた体験で、それを聞く度に感じるのは、李紅の背負う運命の重さだ。