「いいよ…………なんにも言わなくて」


分かってるから。

引き寄せた耳元でそう呟けば、李紅はまるで言えない言葉の代わりのようにその細い腕を私の背に回して、そっと抱きしめ返した。


「…………ずるいな、俺」

「それでも、傍に居てよ」


恋人なんてなれなくてもいい。幸せになんてしてくれなくていい。ずるくたって、醜くたっていいから。

ただ傍に居て。



「本当はね………怖いよ?」


いつか、君がこの世界から居なくなるその日が、怖い。


この前、ベットで酷く苦しそうに眠る李紅を見て気付いた。


きっとこの先、この前みたいなことはたくさん起こって、もっとひどいことも起きて。だんだんと弱っていく李紅から、目を逸らさずにいなくちゃいけない。

最期まで寄り添うって、きっとそうゆうことだ。


それは生半可な覚悟じゃ無理だ。私にそんなに覚悟はない。


それでも、李紅が好きだというこの気持ちが、変わることはきっと無い。


いつか、後悔するならそれでもいい。



「傍に居ようよ、私たち」


その笑顔に、いつか見せてくれる涙に、一番近くで触れられるように。

寄り添って生きていこうよ。

いつかのその日まで。