「……おいお前、熱が出てきたんじゃねーか…?」
専門知識は皆無だから確かなことは言えないけれど、こうして手を握っていれば嫌でも分かる。
実際、ついさっきまで真っ青だった顔色は、すっかり紅潮している。
「動きたくないかもしれないけど、やっぱりちゃんと布団で寝た方がいいぜ」
「……いい、起き上がりたくない」
「だったら寝てていーぜ、俺が運んでやるから」
「なに急に。なんでそんな優しいの」
「……………別に、ただお前が…」
───お前が、思ってたよりずっと、真っ直ぐで、いいやつだって気付いたから。
そう考えるとこいつも気の毒だ。学校でいつも独りなのは別に独りが好きとかじゃなくて。単に学校というものに慣れてなくて、団体行動が苦手なだけだ。
それなのに、顔がいいだけに黙っていても女子は寄ってたかってくるから、男子に良くない印象を持たれがち。
実際俺も、男友達は要らないのかと思ってしまっていたし。
「───いいぜ」
「え?」
「友達になってやってもいいぜ、李紅」
なんて、恩着せがましいかもしれないけれど。今まであんなぶっきらぼうに接して来ただけに、素直に「俺もお前と友達になりたかったんだ」なんてとても言えない。
だけど、こんな不器用と初めて読んだ名前だけでも、なんとなくコイツにだけはこの気持ちが伝わるような気がした。
「………ありがと、賢太郎…」
ほら、ちゃんとこいつには伝わってる。
柔らかく目を細めた笑顔がそう教えてくれる。
不思議な感覚だった。
まるで心の中の意地を溶かされるみたいに、途端に嬉しく思えたんだ。



