「えっ」
「ちょっとだけ胸貸して」
そういうと先輩は前から私を包みこみ、
肩に頭を預けた。
目をつぶり、
私に身体を委ねてくる先輩は温かい。
「よく気づくよね、ゆうちゃんって。人のこと」
人のこと、か。
でも、そうじゃないんだ。
「先輩だからです、気づくのは」
好きな人だから少しの変化にも気づけるの。
「なにそれ。
そんなこと言われたら、変な気起こしそうになるじゃん」
先輩は悲しげな顔でそんなことを言う。
「……いい、です、別に……」
私は先輩に聞こえるか分からないくらい小さな声でつぶやいた。
先輩が私に頭を預けているように、
持っている悲しみだって半分こ出来たらいいのに。
そう思いながら彼を見つめると、
先輩は私の頭をポンポン撫でて言った。
「冗談だよ」


