先輩も来ていなかったなんて。
先輩はゆっくりと私の方に歩いてくる。
そして彼は遠くを見つめて言った。
「まさかそんなカミングアウトされるなんて
思わなかったな……」
「すみませんでした……」
あの時。
私の名前がゆうだって勘違いされなければ、
私と先輩の関係はなかったはずだ。
勘違いされたまま。
あの時はそれでいいと思ってしまった。
「知らないって罪だよな
何にも知らず、何度名前を呼んだのか……」
すっと手を伸ばした先輩は私の頭を撫でる。
寂し気に瞳が揺れていた。
そして申し訳なさそうに言った。
「たくさん傷つけたね……
謝っても謝り切れないほど」
さあっと吹く風が頬を優しく撫でて
まるで私を包み込んでくれているみたいだった、
先輩は言葉を詰まらせると、静かに私に伝えた。
「本当にごめん」
ごめん、か。
確かに何度も傷ついた。
だけど、違う。


