「ゆうちゃん、どうしたのぼーっとして」
「いえ……ちょっと考え事」
私が首を振ると
先輩は首を傾げて言った。
「不思議な子」
「不思議?」
「うん。だってゆうちゃん、
いっつも走って俺のところ来るし」
「だって先輩……
走らないといなくなっちゃいそうだから」
「……そんなことないよ」
「本当に?」
「うーん、たぶんね」
あいまいな返事をする先輩。
私が走って止めないと
先輩はきっとどこかに行ってしまう気がする。
そしてもう一生ここに現れることはないだろう。
「先輩、どこにも行かないで」
それだけは嫌だから、
私は必死に引き止める。
「ゆうちゃん」
先輩は不安気な顔をする私のことを
ぎゅっと抱きしめた。
ふわりと香る先輩の匂いはいつも安心感に包まれる。
放課後の2時間だけ。
ここが唯一私と先輩を繋いでくれる場所。


