【立花春side】
『……私、ゆうって名前じゃないんです』
その言葉を聞いた時。
俺の時間が止まったかのように動けなくなった。
彼女の名前はゆうじゃない……。
俺は何度彼女のことを
"ゆうちゃん"
と呼んだだろう。
何度も何度も
もういない彼女と重ねて名前を呼んだ。
"ゆう" "ゆうちゃん"
そうやって名前を呼ぶたびに
傷つけていたことに俺は気づけなかった。
自分はなんてヤツだろう。
彼女に甘えて、
自分の悲しみを打ち消すように彼女と一緒にいた。
ずっと、ずっと、許されないことをしていた。
それなのに、
彼女は最後に笑顔を残して去っていった。
「……っ、」
手を伸ばしても彼女はもういない。