ねぇ先輩、名前をよんで。



「……っ」


誰かの言葉がないと動き出せなかった。


先輩が好きだ。

春先輩を思ってここに来た。


とっても大切で真剣な恋だった。


だからこそ、

そのまま消えるように終わりにしてはダメなんだと気づいた。


「清水くん、ありがとう……」


私は力強く手を握る。

そして。


「行ってくる」


しっかりと、この恋を終わりにしようと決意した。


彼に背中を向ける。

ゆっくりと歩き出そうとした瞬間。


ーーパシン。


とっさに手を取られた。


振り返ると、

そこには苦しそうな表情の清水くんがいる。


「い、……て、こい」


彼が口にした言葉それだった。


だけど、違う。


"行くな"


私にはまるでそう言っているように見えた。


そっか、私のために。

必死でそうやって背中を押してくれたんだ。