【短編】本日、総支配人に所有されました。

「よし、出来ましたっ」


最後にガトーショコラに添える生クリームを泡立てて完成。


二時間以上も夢中で台所に立っていた私は、完成した途端に気が抜けた。


先にシャワーを浴びた支配人がキッチンに立ち寄り、私を見る。


「ココに生クリームついてる」


頬に生クリームが付いていたらしく、支配人は指で絡めとり、指先を私の口元に運ぶ。


唇に生クリームを運ばれたので、仕方なく舐めたのだが・・・、その指にまた生クリームを付けて自分で味見をした。


「丁度良い甘さだな。合格」


いつもみたいに子供扱いするような頭ポンポンをして、微笑む。


そんな支配人を目で追ってしまい、失敗したと思った。


目が合うと先に反らすのは私で、支配人は私を見つめたままだから。


恥ずかしさから下を向き、生クリームを見つめるしかない。


「顔が赤いな…。これじゃ、当分、子供のお守りと同じだな…」


意地悪そうに呟き、顎に指を触れて、上向きにさせられたが、やっぱり目は合わせづらい。


「少しずつ慣れさせてるのに、全然慣れないな…」


そう言うと私にキスをする様な仕草をしたが、寸止めで顎から指を離した。


一瞬のトキメキを返して欲しい。


「うぅっ…。こ、こないだだって、チョコ食べた時に…指を舐めませんでした?」


何事もなかったかの様に振る舞い、ソファーに座る支配人が憎たらしくなり問いかけた。


「わざと、だ。だが、こないだは反応が薄くてつまらなかった。からかうのは楽しいが、そろそろ慣れろ」


やっぱりね、そうだと思った。


わざとでなかったら、触れる位置ではなかったはずだ。


「………支配人は大人で経験値も高いかもしれませんが、…私は経験値が低いですから、早々慣れません。それに…私達の関係って何ですか?」


支配人の傲慢な態度に対して、抱えきれなかった思いが爆発し、勢いだけで責める。