【短編】本日、総支配人に所有されました。

今日は朝一の早番なので私の定時は午後四時だが、支配人は帰れないので、夜まで居るのかもしれない。


私達が帰ってから中抜けの休憩をするのかもしれないが、身体を壊す様な無理はしないで欲しい。


「中里はどうする?予約に戻るか?それとも、我々と一緒に行動するか?」


食事を食べ終わり、残り僅かな休憩時間の中で中里さんに確認する支配人。


中里さんは私より半月早い二月中旬に、私とは別な系列ホテルより栄転した一人だったらしい。


私同様に疎まれ、先日のダブルブッキングの件から些細な嫌がらせも受けていたのが発覚し、支配人が気にかけていた。


「わ、私も良いなら…一緒に仕事をしたいです。予約以外の仕事は経験が浅いので、違う世界も知りたいです」


「分かった。じゃあ、中里も篠宮同様に一ヶ月だけ面倒見てやる」


いつもの如く、一切の迷いもなく自信たっぷりに言い切る。


中里さんは嬉しそうに返答し、私と顔を見合わせてお互いに微笑んだ。


本日、支配人に所有される人数が二人に増えました。


当ホテルに移動してからは、話す人も居ずに心細い思いをしていた私だったけれど、同じ境遇に立たされている中里さんと一緒なら乗り越えて行けそうな気がする。


これを機会に仲良くなれたら良いな・・・。


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食事休憩が終わると、結婚披露宴の会場セッティングのヘルプに行った。


週末に盛大な結婚披露宴が行われるらしく、男性が一人でテーブルにクロスをかけていた。


「お疲れ様です。篠宮さんに中里さん、今日は一日よろしくお願いします」


「よろしくお願い致します」と私達は声を揃えて挨拶をすると、「そんなにかしこまらなくていいよ」と言ってくれた。