「いや、ホント驚いたってレベルじゃないっすよ!」


「マジで、こっちの心臓まで止まるかと思ったし!」


口々にそんなことを言う彼らを、あたしはげんなりしたように白い目で見つめていた。


あれからアラタはそのままどこかに連れて行かれ、脳波や何かを調べて戻ってきたときには、空は幾分白み始めていた。


それでも意識を取り戻したために快方に向かっているらしく、散々泣いていたはずのメンバーは、アラタを囲んですでに笑っていて、あたしひとりがこの状況についていけていないのだ。



「いや、ナウシカ観てたら俺も空飛びたくなっちゃって。」


お前、本気で死ねよ、って思う。


脳波は異常がなくて、3階だったからとか運よくナンタラとか言ってて、骨折箇所とか色々説明を受けたけど、あたしは聞くことも出来ずにただ泣いていた。


それでも今となってはあの涙を返して欲しいと思うし、脳波に異常がないなんて絶対嘘だ。



「そんじゃ俺ら、これからみんなで明け方ラーメン行ってきますね。
後はマイさんに頼んでますから。」


いやいや、頼まれてませんけど。


これが日常なのか、それともみんな揃って脳みそおかしいからなのか、笑ってそんなこと言った彼らは、ゾロゾロと部屋を後にする。


鳥ガラスープとかだったら笑えないな、なんて思いながらそんな姿を見送ってみれば、部屋にはすぐに二人分の沈黙の帳が下りた。



「マイ、こっち来いって。」


「命令すんな。」


呆れ半分でその傍まで足を進めると、殴ってやりたくなる衝動を抑えることに必死だった。


それでも顔を突き合わせてみれば、また自然と涙が溢れてきて、涙腺なんて緩みっぱなしだから嫌になる。



「ホントのこと言えよ!
アンタ、飛び降りたとか他に原因あんでしょ?!」


「…いや、まぁ…」


そう、まるで誤魔化すような台詞に拳を握り締めた。


目も合わせられなくて、視線を落としてみればその瞬間、溢れていた涙まで零れ落ちる。