時計はいつの間にか午前2時を指していて、これが笑い話なら今頃みんなで酒を酌み交わしているのにと、どこか遠い意識の中でそんなことを思う。


結局コージくんとあたしだけが残り、他のみんなは煙草を吸いに外に出た。


アラタの顔を穴が開くほど眺めても、何ひとつ変わりはない。



「…このままコイツ起きなかったら、どうなんの?」


そう問うたのに、コージくんは首を横に振るだけだった。


別にばあちゃんが死んだときだって何も思わなかったし、道端で人が野たれ死んでようと関係ないとさえ思っていたのに。


なのに、アラタが死ぬなんて、許せなかった。



「…あたしのために目覚ませよっ…!」


その瞬間だったろう、握り締めていた指の先がピクッと反応した気がして、あたしはアラタの名前を何度も呼んだ。


コージくんも同じようにアラタの名前ばかり叫んでいて、ゆっくりと、彼の瞳は開いていく。



「…アラタ…!」


一番最初に怒ってやろうとか殴ってやろうとか、そんなことを思っていたはずだったのに、なのに実際には泣くことしか出来なかった。


まだ焦点の合わないような瞳は辛うじてこちらを捕えるだけで、それでも目を覚ましたことが嬉しかったんだ。


散々頭の中に浮かんでいた文句はその瞬間に消えてしまい、声にならない声の彼の唇は、微かにあたしの名前に動いた気がした。


だけども安堵したのも束の間で、目を覚ました彼はゴホゴホと咳き込み始め、焦ったようにコージくんは、ナースコールに手を掛ける。


すぐに雪崩れるように医者や看護師が再びやって来て、あたしはその瞬間にアラタから引き剥がされた。