無事に法事が終わって2日ぶりにアラタに会ったときのあたしといえば、すでにストレスに支配され、文句ばかりだった。


自分には普通に家族が居たことすら忘れていたし、いざ会えば、金髪はダメだとか爪を切れだとか、そんなことばかり言われるのだから。


法事で着た服はダサい真っ黒で、ばあちゃんは女が黒い服なんか着ちゃダメだって言ってたのにと、そんな愚痴ばかり。


まるで機関銃のようだと言ったアラタはそんなあたしを持て余したのか、無理やりキスをして口を塞いだ。


とにかく、アラタとのセックスだけが、あたしの安定剤なのだ。


求め合えば満足だし、自分自身、サルのようだと思ってしまう。


思えばあたしは彼のメルアドすら知らないし、家族構成も、もちろん年も、名字ですらも未だに知らないまま。


だけども別に興味なんかないから聞かないままだし、アラタもまた、あたしの言葉に適当に合わせてるだけで、本当にセックスして全ての会話をぶっ飛ばしている感じ。


だってあたし達には、それが性に合っているから。



「あたし、時々思うんだ。」


「ん?」


「アンタの背中の皮を剥いで、財布に入れて持ち歩きたいと思うの。」


四六時中眺めてても飽きないし、そしたらあたしのこの無意味な苛立ちも、少しは解消されるんじゃないかな、って。



「そうだ!
アンタが鳳凰の絵描いてよ!」


「…無理だよ。」


「何で?」


「霊鳥って言われてんだぜ?
安易な気持ちで描くモンじゃねぇし、下手したらマジで取り殺される。」


肩をすくめたように言ったアラタは、あたしから体を離すようにして煙草を咥えた。


今までで一番つまんないことを言われた気がして、あたしは不貞腐れるように口を尖らせてしまうのだけれど。



「お前、俺が死んだらどうすんの?」