アルコールが入ってるわけでもないし、アラタと鳳凰のことを考えながらシゲちゃんに抱かれ、当然だけどイクことが出来ずに終わってしまった。


こんなんじゃ、欲求不満が爆発してしまいそうだ。


最初は優しいばかりのセックスも悪くないと思っていけど、でも、慣れてくるとさすがに飽きる。


全然別のことを考えているあたしに気付いていないのだろう彼は、果てた後でひどく柔らかい顔で口元を緩めた。



「シゲちゃんってさ、何であたしと付き合いたいと思ったの?」


「可愛いと思ったが最初だけど、好きだからに決まってるじゃん。」


そうか、決まっているのか。


多分あたしは、シゲちゃんのことは一通り知っているだろうし、アラタとは本当に、真逆に位置するような男だと思うけど。


彼や鳳凰のことばかり考えているあたしの中に燻るものが恋心ってヤツなんだとすれば、笑うことしか出来ないのだ。


だって、アラタと鳳凰の、どちらに恋しているのかがわからないのだから。



「あたしみたいな我が儘なのと一緒に居て、楽しいの?」


「楽しいよ。
好きだから、ずっと一緒に居たいと思ってる。」


そりゃあまた、珍しいことを言われたなと、何も言わずに肩をすくめた。


あたしが男なら、こんな面倒な女なんて願い下げだし、関わりたくもないと思うのに。



「マイは、俺と居て楽しくないの?」


「…楽しいよ。」


嘘だけど。


もちろんそう付け加えることはなく、あたしは剥ぎ取られた服をかき集め、そしてそれを再び身に纏った。


驚いたような色を浮かべたシゲちゃんの顔に“帰るね”とだけ告げ、バッグ片手にあたしは、手をヒラヒラとさせるだけ。


本当につまんなくて、これならアラタに殺されていた方がマシだったかな、なんてことさえ頭をよぎるのだから、どうしようもない。