「マイ、何か考え事?」


そう、あたしに問うてきたのは、彼氏のシゲちゃん。


本名が“シゲキ”で、刺激のある男だと思ったのだが、実際は刺激がない方の男だったことは残念なんだけど。


それでも付き合って2ヶ月くらいにはなるだろうか、別に恋心とかそんなのがあるわけじゃなく、あたしにとって便利だから、名目上は恋人にしてやったのだ。


確かに言う事なら大抵は聞いてくれるし、優しいばかりでぶっちゃけつまんないんだけど、でも、あたしだってヤりたいときに理由なくヤれる相手が欲しかっただけ。



「俺、マイに元気がないと不安なんだ。」


相手の家に来て、無言を貫いたまま自らの爪をいじってるあたしもどうかと思うけど、それにしても心配そうな顔に、無意識のうちに苛立ちが募る。


アラタと別れてから一週間くらいは過ぎただろうか、もちろん彼からの連絡はなくて、そのことを考える度に煙草の本数が増えてしまうのだ。


アラタに、そしてあの鳳凰に、どうしてももう一度会いたいと思ってしまう。


そんなことを思えば、自分の中のどうしようもない部分がひどく疼くのを感じてしまい、本当にあたしは始末に負えない女なんだと思うけど。



「ほら、この前だって連絡取れなかったじゃん?
何かあったのかって、すっごく心配だったんだ。」


「うるさいよ、もう。
バイトしてて、そのまま帰って爆睡してたって言ったじゃん。」


“あたしのこと、信じられない?”と、そう眉を寄せてみれば、彼は口ごもるように言葉を飲み込んだ。


まぁ、ナンパで付き合ったのだから信じろと言うにも無理があるかもだけど、シゲちゃんは、あたしが夜な夜な遊び歩いているなんて夢にも思わないだろう。


ましてや、すぐに男とホテルに入っちゃうなんてことも。



「ごめん、マイ。」


しょぼくれた顔が視界の端に映り、面倒になってあたしは、“良いよ”と言って自分からキスをねだった。


一瞬、驚いたように目を丸くしたシゲちゃんだったけど、でも、そのままあたしを押し倒すようにして、ベッドに入る。