「お前ってさ、繋ぎ止めたくなる女だな。」


煙草が灰皿へと押し当てられたその瞬間、あたしの体は容易く押し倒されていた。


そして投げられたのはそんな台詞で、まるでこのまま監禁でもしそうな顔してるアラタの鼻先が、あたしのそれへと触れるほどの距離に居る。



「ねぇ、何で部屋に誘ったの?」


「セックスしたかったから。」


「へぇ。」


「だって、コミュニケーションみたいなもんだろ?」


「何それ?」


「面倒な会話とか全部ぶっ飛ばして、仲良くなれる方法。」


「それがセックスだ、って?」


「そう。」


そんな言葉に、思わず笑ってしまう。


確かにアラタはそんな感じで、出会った時からずっと、会話らしい会話なんてひとつも成り立っていなかったのだから。


それに、あたしもそっちの方が手間が省けて良いと思っている人種だし。



「いっつもそうやって、鳳凰をダシに女の子誘ってんだ?」


「いっつもじゃないっつの。
つーかこれは、あんま人には見せねぇの。」


「…何で?」


「コイツを安売りしたくねぇから。」


「じゃあ、何であたしには見せたの?」


「ビビビッときたから?」


「意味分かんないって。」


だけどもコイツの変な直感めいたもののおかげで、あたしはこの鳳凰を拝めたのならば、少しは感謝もしなければならないのかもしれない。


軽くキスを交わしてみれば、やっぱり口元を緩めずには居られなかったわけだけど。