「壺山……」

俺は壺山をぎゅっと抱きしめた。

「大丈夫。
さんちゃんは幸せだったよ、きっと。
壺山にこんなに思われて。
最期に会えなくても、幸せに天に昇ったんだよ」

「そうだと、良いな……っ」

俺の腕の中で顔を上げた壺山が、潤んだ瞳でにこりと笑った。

その時、控えめなノックの音がした。

「お嬢様、お夕食の用意が整いましてございます」

「はい……。
行きましょう、安城、野崎君」

立ち上がった壺山が、俺達を促す。

「今日は壺山に奢られてばっかりだね。
壺山、ありがとぬん!」

長い廊下を3人で歩きながら、いつものおちゃらけた様子で野崎が壺山に礼を言う。
あえて、いつも通りにしてるんだ、と思う。
野崎なりの気遣い、なのかな?
それにしたってよくわからないけど。

「ふふ、野崎君はいつも陽気ね」

少し笑顔を見せた壺山に、俺も野崎も小さく笑顔を作った。