壺山が肩を震わせている。
俺はたまらなくなって、抱き寄せた。

「さんちゃん、さんちゃん……!」

壺山は俺の腕の中で泣きながら、愛犬の名前を呼び続ける。

壺山が助けた犬は、壺山を助けていたのかも知れない。
精神的に支えあっていたんだろう。

そのとき俺がいてやれればよかったのに……!
腕の中で泣きじゃくる壺山を見ていると、そんな気持ちが芽生える。

小学校低学年のときに中途半端に助けて、それから一緒じゃなかった。
しかも忘れていた。
それでもこの子はしっかりと覚えてた。
俺の言動を支えに生きて、しかも犬を大事にしてたんだ。

心の支えにしてたんだ。

「ごめん、ごめんな、壺山……」

俺はぎゅっと壺山を抱きしめた。

それからどれくらいたっただろうか。
野崎もいつものように茶化してこない。
黙って俺たちを見守っている。

ひとしきり泣いた壺山は、恥ずかしそうに顔を上げた。