「飼ってた犬よ。
わたしね、小さい頃いじめられてたでしょ?

捨てられてた犬を拾ってね、自分と重なって……。
虐待されたみたいで傷だらけで、最初は懐かなかったけど……、
保護して一緒にいたの。

つらくないよ、わたしが可愛がってあげる。
ずっと一緒にいようね、って。

安城がわたしに言ってくれたみたいに、大切に可愛がってたの……」

壺山が静かに俯きながらそう言葉を絞り出した。

俺も野崎も、言葉をかけることが出来なかった。
しんと静まり返った部屋で、壺山の言葉を待っている。

「安城とは中学は別だったし、小学校の高学年から今まで一緒にはいなかったけど。
それでもわたし、安城が助けてくれたこと、すっごく覚えてた。
その気持ち、大事にしてた。

で、さんちゃんを大事にしてたんだけど……。
病気で……。治らなくって……!
動物病院に入院してたんだけど……。
今日、昼過ぎに連絡が……!」