「じゃ、今日はここまで」
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
「茉白〜、さっき怒られてたね」
いたずらに笑う悠来。
「外に何かあったの?」
「や、桜散ったな、って思っただけ」
儚いな、なんてそう、思っただけ。
「たしかに一瞬だったよね〜
あんなに綺麗なのにもったいない」
「儚いからこそ人はみんな桜に惹かれるんだよ」
背後から声がして驚いて振り向く。
「三井先生!」
そこには先ほどでていったはずの三井先生が立っていた。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃねーよ。
逢崎お前、人の授業聞いてなかったから今日の放課後、国語科準備室こいよ」
「え、ちょ、は?」
「雑用たっぷりさせてやるから楽しみにしとけよ」
そう言ってまた私の頭を教科書で叩き、教室をでていった。
「だって、茉白」
「……さぼろうかな」
「まじめに行きなよ」
そう言って笑う悠来はどこか楽しんでるように見えた。
・
放課後、私はコンコンと準備室のドアをノックする。
中からどうぞ、と声が聞こえガラガラと扉を引いた。
「お、逢崎ちゃんと来たな。
褒めてやろう」
「……帰っていい?」
「来てそうそうそりゃないだろ。
まぁ座れって」
扉を閉めて三井先生の隣の席に腰を下ろす。
