若からの招集により俺(隼人)は、あの少女の病室の前まで来ていた。
隣には仁もいる。
俺達は瀬尾組に行った若のスーツに盗聴器を仕掛けていたため、現時点でのある程度の情報は理解している。
早急に若の指示を仰ぎ、少女の扱いを含めた今後の動きについて確認したいところだ。
コンコンコンコン…
中にいるはずの和也に合図を送った。
中に少女がいることを考えると勝手には明けづらいのが本音。
しかし、しばらくしても反応がない。
俺は多少の罪悪感を感じながらもドアを開けようと手を伸ばした。
が、掛ける前にドアはゆっくりと動いた。
隼人「おい和也開けんの…」
“おせぇよ”
そう言いたかったが言えなかった。
ドアを開けたのが和也ではなかったから。
相手の顔は和也を相手にするつもりだった俺の視界には写らない。
視線を下げてやっとその顔を捉えた。
例の少女だ。
隼人「おっと…、これは失礼。」
「…ご…ごめ…、ごめんなさい…」
俺が“開けるのおせぇ”と言ったことに謝っているのか
彼女は俯いて、震えた声を抑えるように言った。
仁「結愛様
お休みのところ大変失礼致しました。
御無礼をお許しください」
今まで黙っていた仁が立膝をつき完璧な笑顔を貼り付け、少女を見上げるように言った。
「いや、あの…そんな…
えっと…」
初めて目にした俺達に怯えあがってしまい、
彼女は今にも尻もちをついてしまいそうな勢い。
彼女はまるで“蛇に睨まれた蛙”状態だ。
これじゃまるで俺らが悪者だ…。
このカオスな現状を誰かに救って欲しいと感じた時、遠くの廊下から足音が聞こえた。
そのスピードは近づくにつれて、どんどん上がっている。