俺は一般外来の時間を終え、入院患者のカルテを作成していた。



そのうちの一人が“宮野結愛”


『中度の喘息症状有り。吸入ステロイドを中容量使用
腹部を中心に全体に筋挫傷有り。要経過観察』



彼女が寝ている間に撮った胸部CT画像を光に当てて見る


「…肺炎のギリギリ1歩手前だな

前兆が見受けられるってところか」


カルテに追記する


『担当医:久米遥太、黒崎龍太』


白衣の下に隠れる腕時計をチラリとのぞくと20時になろうとしていた


「そろそろ点滴がきれる時間だな

1回診察しに行くか…」


コンコンコンコン…


「はい」

この時間に誰だ


「失礼します、遥太さん」


「おう、どうした和也」


「結愛様の意識が戻りましたのでご報告を」


「お、目ぇ覚めたか

ちょうど今行こうとしてたんだ」


俺は新しい点滴を手にして立ち上がり少女の部屋へと足を運ぶ


「龍太から連絡は?」


「事は思いの他上手く運んだようです」


「…そうか。

抗争なら抗争で、瀬尾組を潰すチャンスだったんだけどな

まぁ、あの子の精神的負担考えたら抗争にならんくてよかったんじゃねぇの」


「若がそうなるように仕向けたのでしょう

結愛様の為に」