「……お金…ないです

保険証だって…」




「いいから、何も考えるな」



「……でも…」



「これは俺からの頼みだ


結愛、病院にいて欲しい」



「…頼み…ですか?」




「そうだ。

だから何も気にするな。


和也をお前のそばにいさせるから困ったら頼るといい



分かったか?」




「……お気を…つけてくださいね」



こんな状況で



彼女は何かを察したのであろう。




なんつー勘のいい女だ。




「…誰に言っている



今は自分のことを考えろ



いいから休め」




手を彼女の瞳の上において強制的に眠らせる。





しばらくしてすぐに彼女は意識を手放した








瞳の上の手をどかし




そっと頭を撫でてやる。



その時



彼女の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。



生理的なものだったかもしれない



でも、その時の俺には



結愛の心が泣いているように感じた。



「……結愛



訳わかんねぇし辛ぇよな



お前は俺のこと覚えてねぇもんな」





俺は覚えてる