普段なら何も言わなくても口を開いて吸入器を咥えるのだが、結愛はなかなか口を開こうとしない



「……?


どうした、結愛?


吸入しないと寝れないぞ」



「……私のことはいいです……


龍太さん、少し横になってください……」



自力で座る体力もない今の結愛に言われたくない



でもそんな彼女に心配されるほどに、自分は顔に出しているだろうか



いや、出しているわけないのだが。



「そこまで言うなら分かった


ちゃんと俺も休む。それでいいか?」



腕の中の小さな白い顔は弱々しくコクりと頷いた



「分かったならほら、早く吸入終わらせよ」



体力がないからなのか


いつもより吸う力のない結愛は、いつもの倍の時間をかけて吸入を終わらせた




「結愛、よく頑張った


今ので終わりだから………


結愛?」



終わったと同時に彼女は気を失うようにして俺の胸の中で眠っていた




何とも言えない温かな気持ちが胸を支配して、俺の口角は勝手に上がっていた




「お疲れ様、結愛」



結愛の身体をそっと横たわせ酸素マスクをつけ直した。



胸から結愛の温もりを失ったのと同時に、急な睡魔に襲われた



それに逆らう術もなく、俺は意識を失うようにして、結愛のベッドで上半身を横にして目を閉じた