「あ、いえ
なんでもないです!」
と言いながらも私はそれから目を離せないでいた
「ん?あの店か?」
龍太さんは私の目線を辿ったようだ
ゴクリと唾を飲み込むだけで、何も言えない私を見かねて
龍太さんはその店に歩み寄った
手を繋がれている私も自然と歩みよる形になる
龍太さんにつられて、磁石同士が引き寄せられるように私はマネキンの前に立った
あまりの服のラインの綺麗さに見とれてしまう
「...気に入ったようだな」
店員「まぁ、黒崎様のお連れ様に気に入って頂けるなんて光栄でございます
こちら本日入荷したばかりの新作でございます
きっと線の細いお嬢さんにお似合いになるかと思いますよ
ご試着はなさいますか?」
龍太「あぁ、頼む」
「え、ちょっ...龍太さん!」
私をおいて2人の話がどんどん進んでいってしまう
店員「さぁ、こちらへどうぞ
フィッティングルームへご案内致します」
龍太「行ってこい」
笑顔の店員さんを前に“結構です”なんて言えるだけの勇気は私にはない
とりあえずついて行って試着して
“似合いませんでした”っていうしか丁重に断わる方法はない

