「...ありがとうございます

本当に優しいんですね、龍太さん」



ふんわりと、でもどこか切なげに微笑んで言った


俺は何と言い返せばいいのか分からず、結愛から視線を外し、窓から流れる景色を無意味に眺めていた


今は結愛との距離を埋めたくても、その理由がない


後部座席の2人の身体は不自然なほど離れていた


ちらりと結愛を見れば、結愛も見慣れない景色をじっと眺めている


と思えば、結愛の頭が車の揺れに合わせてグラりと揺れた


(.....寝たか)


午前中の検査で相当疲れさせてしまったのだろう


俺は結愛の揺れる身体をそっと背もたれに預けさせた


病院からマンションまではさほど距離があるわけではないので、結愛が眠りについてから程なくして車は目的地に到着


助手席から後ろを振り向いた和也は目を丸くしてから眉を下げて小さく笑った


和也「やけに静かだと思ったら、寝ちゃってたんだね

まだ本調子じゃなさそうだ」


俺は1度車から降り、結愛側のドアに回り込み開けて、結愛をそっと横抱きに抱き上げた


運転してくれた組員に“ご苦労”と告げてから和也とエレベーターに乗り込み、最上階へ。


和也が開けた玄関を通って、リビングに行く前に手前の部屋に入った


そこは新たに結愛のために用意した部屋。


取り急ぎ用意させたベットに、起こさないように横たえさせて布団をかけた