病院の裏に横付けされた黒塗りの車に近づくと助手席から和也が出てきた


和也「おかえり」


ふんわりと微笑みかける和也に“あぁ”と適当に返事をする


和也「結愛ちゃんも、おかえり

退院、おめでとう」


背の低い結愛の向かって、少し屈んで頭を撫でている


彼の言動に彼女は少し狼狽えている


繋いでいる手がギュっと握られ少しの力が加わり、結愛の動揺が伺える


結愛「...和也さん、色々とありがとうございました

ご迷惑をおかけしてすみませんでした」


和也「そんなことないよ

結愛ちゃんの側に入れて幸せだったし。元気になってくれて本当に良かった」


撫でていた手はいつの間にか頬に当てられており、和也が結愛のことを心底心配していたことが伝わる


だが、その光景を見ていてあまり良い気はしない


「もういいだろ

結愛、車乗って。和也これ」


俺は結愛と和也を離すようにして和也にバックを押し付けた


和也「はいはい

そんなに妬かないでよ〜」


和也を無視して結愛と後部座席に乗り込む


結愛はどうしたらいいのか分からない様子で浅く腰掛けている


「そんなに固くならなくていい...


これからしばらくは、俺がいるところがお前の居場所だ

家だと思って寛いでもらって構わない。いつまでもそれじゃ気が休まらないだろ」