「……14年前…

お前が3歳で、俺が8歳の時の話だ


8歳の夏、俺は本家から離れた家に組員との生活を強いられていたんだ…、組の関係でな


もともと、幼い頃から俺は自由に外に出ることを禁じられていたんだが、その時は特に厳しかった

とはいえ、8歳のガキがそんなこといつまでも我慢できるもんじゃねぇだろ?」


龍太さんの目線は握る私の手を見つめながらも、どこか遠くを見ているようだった。


「俺はその生活に嫌気がさして家を飛び出たんだ


まぁ…、飛び出したと言っても大して慣れない土地に8歳のガキが行く宛てなんてなかったんだけどな


でも戻る気にもならなくて、目的もなくひたすら歩いてたんだ


そんな時、閑静な住宅街の一角にあった小さな保育園の園庭で遊ぶお前と会ったんだ


お前は園庭を囲うフェンスの隙間から小さい手を必死に伸ばして、道路側に咲いている花を取ろうとしていたんだ」





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「…この花が欲しいのか?」


俺の足は自然と少女に歩みより、しゃがんでフェンス越しに話しかけていた



「ほしい!!ほしいの!そのお花っ!」



「ほらよ…」



一輪の花を詰んで少女に渡すと満面の笑みを浮かべた