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暖かな春の日差しに、目を細める。
柔らかな風が髪を撫で、何故か少しだけ寂しい気持ちになる。


君は 、もう、隣には居ない。






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ザワザワと掲示板の前の人だかりを押しのけ、自分の名前を探す。

浮かれた様子の新入生達は私と同じように、名前を探す事だけで精一杯みたいだ。

えっと、椎名琴音…椎名琴音…。

…あった、1組だ!


「ねぇ、奏多!何組だった?」

食い気味に幼馴染の一ノ瀬奏多(いちのせかなた)に問えば、めんどくさげに声を返された。

「ちょっと待ってよ…あ、俺1組だ」

「本当!?じゃあ一緒だ!」

思わず頬が緩んでしまい、幸せそうな笑みを浮かべた私を見ると、

奏多は「はいはい、良かったね。」とそっけなく歩き出した。


「…ちょっと待ってよ!」

奏多が通り過ぎると、同級生らしき女の子がさっきの男の子、かっこよくない⁉︎と噂しているのを見てしまった。

「ねぇ、早くしてよ。」

真新しい制服に身を包んだ奏多は、ここにいる誰よりもかっこよかった。