「紫音ちゃんだよね?」



どうやら、勘違いではないみたい。

たしかに紫音なんて変わった名前が同じ場所にいるわけないよね。

さっきと全く反対の理由を見つけてペラペラと脳内で述べる。



顔を上げると淡いピンクの傘を持った女の人。身なりが綺麗で全体的にシンプルな服装。顔は、傘で隠れて見えないが優しそうな雰囲気がある。



「やっぱり!紫音ちゃんね」



傘をあげて笑顔を覗かせる。
その顔を見て素直に言葉のまんま息を飲んだ。
一気に乾いていく喉。
瞬きを忘れて見開く目。
口を動かす機能がぶっ壊れて、ぱくぱくと繰り返す。