ずっと俺がそばで守るから…


***


わたしは、ただ、ただ走る。


悔しくて悔しくて、涙が止まらない。

わたしよりも、お兄ちゃんの方が悔しいはずなのに、わたしは泣いてばかりだ。



すると、「岸本!待て!」


と走って追いかける桑原がいた。


わたしは、それを無視して走り続ける。


「岸本!待てって!」


「嫌だ!ほっといて!」とわたしが逃げながら言うと、


「ほっとけるかよ...俺の方が早いんだよ!」

と呟いて桑原の一気にスピードが上がった。すぐに追いついた桑原は、わたしの腕を掴んだ。


遊んでばっかのくせに、学年の中でも上位にいるくらい無駄に運動神経が良すぎてムカつく。


「離してよ!ほっといて!」

「嫌だ!ほっとけるか!」

わたしは、腕をほどこうとするが、それを桑原は一切許さない。


「桑原には、関係ないじゃん!」

そう言うと、桑原が、

「関係あるだろ!岸本泣かした。泣かしたのに、ほっとけるか!」

と珍しく、焦ったように言う。


わたしは、その言葉にびっくりして立ち止まった。


すると、桑原が、
「ごめん!」と珍しく頭を下げて謝ってきた。

わたしは、それに驚きながら、戸惑いがちに

「いーよ。わたしも怒っちゃって、ごめん。」

と言った。

「いや、お前は悪くない。ごめん。泣かした、俺がこんなこと聞くのもおかしいんだけどさ...おまえ、今日なんかあった?元気ない。」


珍しく、桑原が真剣な顔でいう。


気づいてたんだ...


「大丈夫だの?桑原には、関係ないことだよ。心配しないで」と言おうとすると



それを遮るように「心配だ。」

と言ったのだ。

そして、続けていった。


「岸本が...いつも笑ってる岸本が元気ないと...うまく言えねーけど、なんか、こう、調子が狂う...」



え...



そこにいたのは、口元を抑え、耳が少し赤くなってる桑原だった。
こんな桑原は見たことない。


今日の桑原はなんか変だ。


わたしはそれに驚きながらも、誰かに話した方が楽になるのかな...と思った。


「聞いてくれるの?」

わたしは、躊躇いがちに言うと

「おまえの話はいつだって聞くよ。」


そんな優しい言葉を珍しく言うもんだから、少しドキドキした。


「ここじゃ、あれだから座れるところにいこーぜ?」


桑原はさっき掴んだ手を握りしめたまま行こうとした。


「あの、桑原...手...」

わたしは少し恥ずかしそうに言うと



「俺は離したくないけど...お前が嫌なら離す。もー泣かしたくないし。」


そんなこと言うもんだからドキッとした。


そして、わたしもそれを止めるようにギュッと強く握った。


「離さないで...」わたしが少し上目遣いになりながら言う。

今日のわたしも変だ。


桑原は、それに少し驚いて



「それ、やべー。絶対離したくねー。」

とわたしの手をさらに強く握って一緒に歩いた...


***