ミリアム!

………。
僕には記憶がある…。まだ、あの日のことを覚えているから。
友達には記憶がない…。あの日のことを覚えていないから。
その友達はもう何処かに行ってしまった。走って出ていったのは知っている。街の皆で逃がしたから。
あれから随分時間がたったのに、僕は君がいないととても悲しくて寂しいんだ…。
一緒にいないと僕は僕でいられなくなりそうだよ…。
唯一、僕のことを差別せずに、1人の友としていてくれた君がとても愛おしく思える。
僕は君にとって心の支えになっていたかな…。
でも僕にとっては君は心の支えだったよ。
いつも側にいるって言ったのに……ごめんね。
「あいつ、何処に行きやがった!?」
「あいつさえ捕まえれば、七海がこっちに戻ってくるのに!」
僕を探す声がだんだん近づいてくる。
捕まるもんか…。僕が捕まったら、街の皆の苦労も、七海の両親の頑張りも全て無駄になってしまう。
だから、待ってて七海…。君のところに行くことを決めたから。だから、僕を待ってて…。
ガサガサッ…!
「……!?あっちから音が聞こえたぞ!」
「あいつに違いない!捕まえろー!!」
君達に僕を捕まえられるわけないだろう…?
もしも人間に追い付かれたら、僕の血が許さないだろう…。
もう夜だ…。獣に勝てるわけがないだろう…。
僕は…一族のなかでも1番速いと言われたものだから…。