世間では夏休みになっていて、うちの店も学生のお客が多くなって毎日忙しく働いていた。

仕事が終わって鉄さんの店で飲んで、終電で帰るっていうのがいつのまにかルーティーンになっていた。


鉄さんの店では、毎回色んな知り合いに会う。

「あれ、リンダどうしたの?エイジは?」

DJやってる石井さんにその日はバッタリあって、そんな風に聞かれる。

何で私がエイジといつもつるんでるみたいに思ってんっだろ?


「最近会ってないし…」

私は語尾を濁らせて適当に答えていた。

「だって、チェリーでよく二人でいたじゃん。」

ああ、あれ見られてたんだって思うと、ちょっと恥ずかしい。

そんなによくいたかな?
そういえば石井さんも、あの店の常連だった。

「高校生は色々と忙しいんじゃない?」

私はそう、曖昧に答えていた。





石井さん以外の人からも、毎回似たようなことを聞かれて、みんなそんな風に思ってたのかと今さら思う。

付き合ってないって思ってたのは、私たちだけだったのかな?

周りからはそんなに、仲の良いカップルみたいに思われてたんだ。




次の日も鉄さんのところでカウンターで一人飲んでいると、見覚えのあるカップルが私の隣に座った。


「あ、久しぶりじゃん、エイジの友達だっけ?」


「あれ、リンダさん?」

それはあのライヴでも見かけたレン君たちで、やたら元気に声をかけてくる。


「雷神のファンのリンダさんだよ。」

隣の女の子にそう私を紹介してくれて、彼女と握手をすると、
「私もファンなんですよ!」なんてやたら元気に言われてちょっと引きそうになる。

「カオリです、よろしくね。」

彼女は明るくそういうと、どんな音楽聴いてるのなんて、気さくに聞いてきてくれる。

何だか裏表のなさそうな、明るい女の子だな。
私も彼女につられて、おしゃべりをしていた。



二人は仲良さそうにわいわい食べ物を頼んで、彼女の方は初っぱなからビールのジョッキを一気に飲み干していた。

レン君もそんな彼女にウーロン茶を飲みながら付き合っている。



私もこんな風に、自然にエイジと付き合えたらよかったのにな…



鉄さんとも、仲良さそうだ。